ここを覆っている深い静けさのために、それらの小物はもの淋しくうつむいているように見えた。《…略…》奥に入っていくとますます、静けさの密度が濃くなってゆくような感じだった。わたしたちの足音だけが、コンクリートの天井に吸い込まれていった。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 ページ位置:33% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
静けさ・静寂
ひっそりと佇む
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......を踏み入れた。 寮の中は不思議なくらい昔と変わっていなかった。玄関マットの模様も、十円玉しか使えない時代遅れの公衆電話も、蝶番の壊れた靴箱もそのままだった。ただここを覆っている深い静けさのために、それらの小物はもの淋しくうつむいているように見えた。 やはり学生の姿はどこにもなかった。奥に入っていくとますます、静けさの密度が濃くなってゆくような感じだった。わたしたちの足音だけが、コンクリートの天井に吸い込まれていった。 先生の部屋は食堂の向こう側にあった。先生が言ったとおり、コックさんのいなくなった食堂はもう長い間使われていないらしく、あらゆるものがきれいに乾燥しきっていた。......
ここに意味を表示
静けさ・静寂の表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
空気の音がジーンと地虫のように聞こえる静寂
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
物音もなく、ひっ込むような静寂がじめじめと周りの世界に澱んでいた。
石坂洋次郎 / 若い人 amazon
このカテゴリを全部見る
ひっそりと佇むの表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
普門寺は日だまりに転び寝したような閑寂さの中に古りさびていた。
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
ここをすっぽり覆っている静けさには、言い訳できない深い力が籠っていた。いくら春休みだとは言っても、その静けさは救いようがないくらいに徹底的だった。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「音の響き」カテゴリからランダム5
静かなフロアに小さな声の雨粒が落ち、次第に雨足が強まり、やがては土砂降りの声となっていつも通りの大部屋へと戻っていった。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
靴音が、夜の闇を歩く獣のようにひたひたと低い音で鳴る
中上 健次 / 枯木灘 amazon
「家・建物」カテゴリからランダム5
厚い檜皮ぶきの屋根が、重く暗い量感で、おそろしく迫って来た
川端康成 / 古都 amazon
歴史的保存物と言ってもいいような吉祥寺の木造アパート
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
(ハワイのフリヘエ宮殿は)宮殿といってもそれは普通の大きな家という感じで華美な装飾はない建物なのだが、王族が好んで住んだだけのことはあるすばらしい風格があった。
よしもとばなな / 銀の月の下で「まぼろしハワイ」に収録 amazon
近づきがたい暗さが漂っていた。夜目で見てもガラスが割れているのは分かったし、壁にはスプレーで落書きがされている。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
音の響き の表現の一覧
家・建物 の表現の一覧
感覚表現 大カテゴリ