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庭じゅうに月がさしている。その中を歩いたら髪に燦く液体がねばりつきもしそうな光波につつまれ、円い躑躅 や檜葉 がくっきりと黒い影をしたがえて鎮まりかえっている。樹や芝生が夢幻的に、生あるもののように思えた。この月夜には、人間の霊魂も遠くたやすく伝わりそうだ。
宮本百合子 / 伸子 ページ位置:75% 作品を確認(青空文庫)
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月の光・月明かり
庭・縁側・ベランダ
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前後の文章を含んだ引用
......敷物の上に落ちて重い音を立てた。 廊下を行くと、燐光のような月の光が、閉め連ねた障子の面に照っていた。伸子は、雨戸に切りはめた硝子窓に、顔を押しつけて外を見た。庭じゅうに月がさしている。その中を歩いたら髪に燦く液体がねばりつきもしそうな光波につつまれ、円い躑躅 や檜葉 がくっきりと黒い影をしたがえて鎮まりかえっている。樹や芝生が夢幻的に、生あるもののように思えた。この月夜には、人間の霊魂も遠くたやすく伝わりそうだ。何百里も離れたところで、妻である女とその母とが、あんな会話をした。それがこの夜、もし佃の魂へ響いて行ったら、彼はどんな心地に打たれるであろう。 伸子はむきになっ......
単語の意味
光波(こうは)
月夜(つきよ・つくよ)
夢幻(むげん)
光波・・・光の波。光線の波動。光を波動と考えたときの呼び方。
月夜・・・月のある夜。月の明るい夜。また、月。月の光。⇔ 闇夜(やみよ)。
夢幻・・・夢(ゆめ)と幻(まぼろし)。実体がなく、儚(はかな)いことのたとえ。
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澄み切った月が、暗く濁った燭(しょく)の火に打ち勝って、座敷がいちめんに青みがかった光を浴びる
森 鴎外 / 佐橋甚五郎 amazon
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山吹やらつつじやら南天やらを思いつきで出鱈目に散らばしたような奇妙に雑然とした庭
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
重なった花びらの隙間から洩れる光が眼脂(めやに)みたいだ
黒井 千次 / 群棲 amazon
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月の光りが、大幅 の帯を空 に張るごとく横に差し込む。
夏目漱石 / 吾輩は猫である
(結露)窓ガラスが結露で埋まると、それだけで、外の世界すべてが覆い隠される。
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon
空は重い雲を広げ、雨が今にも落ちてきそうだ。
瀬尾 まいこ「そして、バトンは渡された (文春文庫)」に収録 amazon
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きい、きい、きい。白いペンキを塗られた鉄の扉を、衛門看守が開いた。
野間宏 / 第三十六号「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
(電球の球は)未熟な少女のように《…略…》光沢なく点っている。
葛西 善蔵 / 悪魔「葛西善蔵全集〈第1巻〉 (1974年)」に収録 amazon
アンペラの畳
林芙美子 / 新版 放浪記
(テラス席)紫色やレモン色の室内の灯を背景に、道路まで並べ出されたキャフェの卓
岡本かの子 / 母子叙情
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