(花火職人の)彼にいわせると、花火は、生きてる化け物だという。あの怪奇な、あの蒼白い妖焔 の幻滅する間際に、自分の魂というものを考えると、知らない女とでも死にたくなるという。――そうかと思うと、こっちの胸に火の移る恋でもある時は、どーんとひらいた柳の中へ、ふところの金でも何でも、追っかけに抛り上げたいような狂躁にも唆 られる。
吉川英治 / 銀河まつり ページ位置:70% 作品を確認(青空文庫)
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打ち上げ花火
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前後の文章を含んだ引用
......青い火が降るとぞっとするようなことがあらあ。やっぱりこいつあ化物の類だろうよ。 七は、自分の作った八寸玉の、その重量にさえ、一種の気味わるさを感じるのだった。 彼にいわせると、花火は、生きてる化け物だという。あの怪奇な、あの蒼白い妖焔 の幻滅する間際に、自分の魂というものを考えると、知らない女とでも死にたくなるという。――そうかと思うと、こっちの胸に火の移る恋でもある時は、どーんとひらいた柳の中へ、ふところの金でも何でも、追っかけに抛り上げたいような狂躁にも唆 られる。だが、両国などの熱鬧 した花火の晩のあと、暗い霧が落ちて、しいんと都会が冷たくなる時の陰気さはなんともいえない。やっぱり花火は生き物で、妖怪さ。 七は今も、そんな......
単語の意味
胸(むね)
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打ち上げ花火の表現・描写・類語(夏のカテゴリ)の一覧 ランダム5
末遠いパノラマのなかで、花火は星水母 ほどのさやけさに光っては消えた。
梶井基次郎 / 城のある町にて
薄明りの平野のなかへ、星水母 ほどに光っては消える遠い市の花火。海と雲と平野のパノラマがいかにも美しいものに思えた。
梶井基次郎 / 城のある町にて
この玉から彼が苦心の赤光 が放てなかったら
吉川英治 / 銀河まつり
瞬き始めた空に花火が咲いた。一つ、二つ。九時から予定されている本格的な打ち上げの、前座みたいな花火だった。赤一色だけの火の花は、すぐに萎れて消えた。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
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「夏」カテゴリからランダム5
暮れ鈍る夏の宵の光りが、景物をほの黒く浮かせる
川端康成 / 掌の小説 amazon
螢の大群は、 滝壺 の底に 寂寞 と舞う微生物の 屍 のように、はかりしれない沈黙と死臭を 孕んで光の 澱 と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
「空・中空」カテゴリからランダム5
窓の外に目をやると、月が見えた。ふやけた黄色をしている。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
さらに幾夜かがあった。中隊を出る時三日月であった月は、次第に大きさと光を増して行った。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
月の夜の明るさが万象に影を失わせ、その隈どりが浮き上がって見えるように思える
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
そらが黄いろでぼんやりくらくていまにもそこから長い手が出て来さうでした。
宮沢賢治 / ひかりの素足
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