衣にも耐えそうもない痩せた体

雛人形のように肉の薄い、洋服の似合わない女の子だった。

幽霊のようにやつれた姿

ベルトを短くするだけでは足らず、ズボンを買い換える必要があるほど痩せる

貧乏暇なしで瘠（や）せています

もう生きている人のようには見えませんでした。本当は地中に埋められ、断食をしたままミイラになっていなくてはならないはずの人が、 煩悩 を振り払えず、ミイラになりきれずに地上に這い出してきた《…略…》魂はもう失われてしまっている。それが戻ってくる見込みもない。なのに身体器官だけはあきらめきれずに独立して動いている。そういう感じでした

（寝たきり老人の性器）母性や性欲のシンボルを抱えていつもじめじめしていたはずの性器が、今では弾力のないゴムのように縮こまっている。

それでも先生はまだ口をききません。僕が部屋の中を動き回るのをただ目で追っているだけです。痩せ細っているぶん、両目がいつもよりずっと大きく 艶 やかに見えました。でもその目にはどのような感情もうかがえません。その目は僕を見ていながら、実は何も見てはいないんです。どう言えばいいのでしょう。それは動きのあるものに焦点を合わせるように設定された自動カメラのレンズみたいに、ただ 何かの物体 を追っているだけなのです。それが僕であるかどうか、僕がそこで何をしているのか、そんなことは先生にとってもうどうでもいいことなんです。それはとても哀しい目でした。

意識はなくなってもひげは伸びるとみえて、白い 粗朶 のような口ひげは 蝶番 がこわれたかと思うほど大きくあけた口のまわりで、 艶 を失ってこまかく震えている。

首を向けるためにはベッドから起きあがって体そのものを廻さなければいけない。プラスチックの堅いカラーが、 鞭打ち症の首をきっちりと固定しているからだ。

はだけた浴衣の胸もとから、肋骨が目立っていた。

腹は紙撚（こより）のように痩（や）せ細っている。

牛のような男

柔道あたりで鍛えているのか、がっちりとした体格

顔は松明の下で、淡紅（うすくれない）の朝顔のように赧（あか）らんで

ひどい疲労から小石のように眠りに落ちた。

急に足もとから疲労がドッと押し寄せて来てヘナヘナと縁先に腰を落とした。

桑木はその暗い部屋から出て本館二階の普通病室に移された。個室だったが窓から溢れている外光が眼に痛かった。その窓枠の下には届けられた花がいくつもならんでいた。知り合いの人たちの見舞だが、赤い、華やかな色はこれまでの灰色の壁だけの部屋とは別世界だった。桑木は地獄から帰還したような心持になった。

奇跡のように痛みがなくなる

自分の体が、キルク（＝コルク）が水に浮いているようで