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もう生きている人のようには見えませんでした。本当は地中に埋められ、断食をしたままミイラになっていなくてはならないはずの人が、 煩悩 を振り払えず、ミイラになりきれずに地上に這い出してきた《…略…》魂はもう失われてしまっている。それが戻ってくる見込みもない。なのに身体器官だけはあきらめきれずに独立して動いている。そういう感じでした
村上春樹 / 独立器官「女のいない男たち (文春文庫)」に収録 ページ位置:75% 作品を確認(amazon)
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患者・病人・けが人
寝たきり
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前後の文章を含んだ引用
......ききません。ただその感情を込めていない虚ろな目で、じっと私たちの顔を見ているだけです。 なんと言えばいいのでしょうか、こんな表現は不適当かもしれませんが、先生はもう生きている人のようには見えませんでした。本当は地中に埋められ、断食をしたままミイラになっていなくてはならないはずの人が、煩悩を振り払えず、ミイラになりきれずに地上に這い出してきた、そんな感じでした。ひどい言い方だと思います。でもそれがそのときに私がまさに感じたことなのです。魂はもう失われてしまっている。それが戻ってくる見込みもない。なのに身体器官だけはあきらめきれずに独立して動いている。そういう感じでした」 青年はそこで何度か首を振った。「申し訳ありません。僕は長い時間をかけすぎているみたいです。話を短くします。簡単に言ってしまえば、渡会先生は拒食症のようなもの......
単語の意味
煩悩(ぼんのう)
身体(しんたい)
煩悩・・・人間の持っている欲そのもの。わずらわしく、悩みになる性分や気性。何かを成し遂げようとする際に惑わし、邪魔になる欲望。
身体・・・人のからだ。肉体。
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患者・病人・けが人の表現・描写・類語(人の印象のカテゴリ)の一覧 ランダム5
手術台の上で俎(まないた)へ乗せられた魚のように、おとなしく我慢している
夏目 漱石 / 明暗 amazon
乾いた唇はまるで縫いつけられたみたいに、固く閉じられています。
村上春樹 / 独立器官「女のいない男たち (文春文庫)」に収録 amazon
(人工呼吸器)規則的に胸を上下させ、静かに息をし続けていた。プスー、プスーという人工呼吸器の音が止むことなくICUの中に響いていた。
瀬名 秀明 / パラサイト・イヴ amazon
咳もあまりしない。しかしこれは咳が癒 ったのではなくて、咳をするための腹の筋肉がすっかり疲れ切ってしまったからで、
梶井基次郎 / のんきな患者
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寝たきりの表現・描写・類語(健康・体調・病気のカテゴリ)の一覧 ランダム5
完全に寝たきりになった重竜は、表面的な機能障害よりも、更に深い部分の衰亡が著しかった。二度目の発作と同時に、重竜は急激に言葉を失っていった。失語症であった。医者はまだまだ症状の悪くなっていくことを告げ、もはや回復の困難なことをほのめかした。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
歩くことを忘れた二本の足が、空洞のガラス管のように力なくのびている。
小川洋子 / 揚羽蝶が壊れる時「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
意識はなくなってもひげは伸びるとみえて、白い 粗朶 のような口ひげは 蝶番 がこわれたかと思うほど大きくあけた口のまわりで、 艶 を失ってこまかく震えている。
向田邦子 / ダウト「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
半分以下の体重になっていたのです。潮が引いた海岸の岩場のように、あばら骨が浮かび上がっていました。
村上春樹 / 独立器官「女のいない男たち (文春文庫)」に収録 amazon
(昏睡状態でたまに意識が戻った時)「夜の八時、帝国ホテルのロビイへ……行ってくれ」 眼をポッカリとあけ、 虚空 を見つめたまま枕もとの私に告げた。
阿刀田 高 / サン・ジェルマン伯爵考「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
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「人の印象」カテゴリからランダム5
あの人は誰だったんだろう。とまた思った。あの、どこか 懐かしい……遠くで、知っている、見たことがある……あの面影。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
(赤ん坊の名前)「あすか」とか「まどか」とか、ひらがなで書く柔らかい名前がいいな……
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
二束三文のやくざな人間
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
町はまったくの無人で、こわいくらい静かだった。ゴーストタウンみたい
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
「健康・体調・病気」カテゴリからランダム5
(つわり)つわりはずぶ濡れのブラウスのように、じっとり彼女に貼りついている。《…略…》彼女は今、神経もホルモンも感情もバラバラになっているのだ。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
(PTSD)雷鳴をテロの爆発と聞き違え、見つめられることを脅迫されているかのように錯覚してしまう、こんな滑稽な、馬鹿げた自分
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
(気分が悪い)貧血のように、酷く気分が悪くなって、恐らく倒れたか、 蹲るかしたのだった。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
もう六十時間くらい起きたまま机に向かっているのでしょうか。眼の裏に薄い膜でも張ったみたいに疲労と興奮が粘りついています。時折眼の前にもう一人の自分がすわっていて、せっせと紙の上に筆を走らせているのが見えます。
阿刀田 高 / 縄 ──編集者への手紙──「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
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