(道頓堀川)夜、幾つかの色あざやかな光彩がそのまわりに林立するとき、川は実像から無数の生あるものを奪い取る 黯 い鏡と化してしまう。不信や 倦怠 や情欲や野心や、その他まといついているさまざまな 夾雑物 をくるりと 剥いで、鏡はくらがりの底に簡略な、実際の色や形よりもはるかに美しい虚像を映し出してみせる。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 ページ位置:0% 作品を確認(amazon)
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水面にうつる光
川
歓楽街・盛り場
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前後の文章を含んだ引用
......いる一角から、小便や嘔吐物の湿っぽい悪臭がたちのぼっている。歓楽街の翳を宿して、流れるか流れないかの速度で西へ動いていく道頓堀川の水が、秋の朝陽を吸っていた。 夜、幾つかの色あざやかな光彩がそのまわりに林立するとき、川は実像から無数の生あるものを奪い取る黯い鏡と化してしまう。不信や倦怠や情欲や野心や、その他まといついているさまざまな夾雑物をくるりと剥いで、鏡はくらがりの底に簡略な、実際の色や形よりもはるかに美しい虚像を映し出してみせる。だが、陽の明るいうちは、それは墨汁のような色をたたえてねっとりと淀む巨大な泥溝である。 大阪市の中心を南北に流れる東横堀川は、西へほぼ直角に曲がりきって、そこで......
単語の意味
情欲(じょうよく)
倦怠(けんたい)
光彩(こうさい)
情欲・・・性的な欲望。「あの子とやりたい」「あの人に抱かれたい」と思う気持ち。
倦怠・・・1.同じ物事が長く、もしくは何度も続いて、いやになる。飽きて嫌気が差すこと。
2.体や心がだるいこと。「倦怠感」
2.体や心がだるいこと。「倦怠感」
光彩・・・1.キラキラと輝く光。あざやかな美しい光。美しい輝き。
2.すぐれていて、よく目立つこと。
2.すぐれていて、よく目立つこと。
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川の表現・描写・類語(水面・水中・水辺のカテゴリ)の一覧 ランダム5
川は 気紛れに岸に当って 淵 を作り、または白い瀬となって 拡がった。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
川と呼べるほど味気のあるものではない。排水溝をそのまま大きくしたような流れだ。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
(道頓堀川)墨汁のような色をたたえてねっとりと 淀む巨大な泥溝
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
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歓楽街・盛り場の表現・描写・類語(店・施設のカテゴリ)の一覧 ランダム5
ひんやりした空気が歓楽街の臭気を濁らせたり消したりしている
宮本輝 / 道頓堀川 amazon
市場のようににぎわい続ける街
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
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「水面・水中・水辺」カテゴリからランダム5
代赭の濃淡の巨大な網のような汚水
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
眼にうつる流れが海のように青々と深みをまして迫ってくる
水上 勉 / 越前竹人形 (1980年) amazon
手繰られた縄は滑車をとおるときに、氷雨のような繁吹(しぶき)をあたりに散らす
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
風が、砂浜に固く根を生やした蔓(つる)草の間を、波形の紋をこしらえて吹き抜ける
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
「店・施設」カテゴリからランダム5
きいっ、きいっ、きいっ・・・・・金属のこすれあう規則正しい音。錆びた鉄のぶらんこが揺れる音。
竹下文子 / 窓ガラス「風町通信」に収録 amazon
洋子がホールに到着した時には、既に客席の人の潮は満ちつつあった。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
「光と影」カテゴリからランダム5
ヘッドライトが地獄の業火のように目の前で燃えさかる
小池 真理子 / 追いつめられて amazon
もう陽が強いので、人の顔が真白であった。
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon
(闇が恐い)それはどんな理屈も通じない根源的な恐怖だった。それは僕の遺伝子に刻みこまれ、太古の時代から営々と伝えられた恐怖だった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
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