自動販売機コーナーでアイスコーヒーを三つ落とした。

闇に包まれた世界で浮かび上がる自動販売機は、灯籠のようにも見える。

自動販売機に小銭を滑り込ませる。

雨催いで風の冷ややかな宵

夜は、道の先までずっと続いていた。わたしは、夜の終わりに向かって歩いているような気がした。その終わりは、くらくらするくらい遠くに見えた。

夜の川は暗く恐ろしく光っていて、ものすごい速さで流れ去っていくので、いつのまにかぼんやりして考えが止まってしまった。

夕暮れの青が透明な刷毛でかさね塗りされるみたいに一段また一段と濃くなり、夜の闇に変わっていった

夜が来るまでの時間は長かったが、川のほとりに 眩まば ゆい光が浮いてくると、時の早さが武内ににわかに襲いかかって、彼をしばらくのあいだ 憂鬱 にさせる。

外には、ただ、黒洞々（こくとうとう）たる夜があるばかりである。

朝、玄関から出ると軽快な日光を全身に浴びる

地平線に 熔け残った最後の光が尽きるのは、うっかり見逃してしまうほど速かった。 　ガラス窓に映った彼自身の姿が濃くなった。

（マンションは）窓の半分ほどに灯りが点っている。

闇が一段と濃い木の影

夜は油のように重く、静かに町並みを満たしていた。あらゆる路地、街角が意味を持って暗く黙っているようだった。

夜の闇にそのシルエットだけを許されている街路樹が、クリスマスのイリュミネーションを煌めかせている。

眼下の道頓堀川に目を移した。雨に打たれて流れ落ちたネオンの色が、いまのこの瞬間にも、川に注ぎ込んでいるかに思えた。

山の中腹に立つ彼のアパートからは闇の中に雑然とばらまかれた人々の営みをくっきりと見下ろすことができた。時折鼠は両手を腰にやり、まるでダウンヒルのコースに立ったゴルファーのように、何時間も意識を集中してそんな風景を眺めることがあった。《…略…》そして暗い海、海と空の闇は区切りようもないばかりに溶け合い、その闇の中に灯台のオレンジ色の光が浮かび、そして消えた。そしてはっきりと区切られたそれらの断層の間を暗いフェアウェイが一筋貫いている。

黒々とした太い電線が空中で蛇のように絡み合い、変圧器が据えられているだけだ。