月と街灯と暗がりと横切る猫と住宅街の影の中

夜の街の窓という窓からこぼれ出す灯影

巨大な蕨さながらの背高の街灯

その顔は電灯を半分だけ浴びて不気味な凸凹をつくる

公園の高い水銀灯は不自然なほど明るくあたりを照らし出している。

夜は時としてその黒い懐の中に明日の期待を秘めている。

新宿駅西口近くにある大きなガラス張りのビルは、夜になると大きな大きな鏡のかたまりになる。そこで夜な夜な、多くのダンサーが練習をしている。

水のような夕やみが、ひたひたと水車小屋のなかにみちてきた。

（小高い）この場所から、 黄昏 ていく街並みを見ているのが好きだ。こうして、点々と点りはじめる灯りをぼんやりと目でたどっていくのが。屋根瓦のかたちが見分けられなくなる直前に、カラスどもが決まってやかましく騒ぎ立てる時刻がある。その時刻を境に昼が夜に変わる。

高原の宵闇は羽をひろげるように容赦なく押し迫って一切の形を黒の溶液 　に溶かしこんでしまう。

かまどの炎で顔の半面だけがメラメラ光って見える

透明感のある白く細やかな肌

暗闇の牛みたいに、のっそり、人影が動いた。

誘蛾灯の青白い光の輪の中に、閉じた木槿（むくげ）白い花が小鳥の寝姿のようにぽっかりと浮いている

町の灯は遠く、男女の組はただ黒い影だけ

担架も入る大きめのエレベーターに乗り込むと、自分が下っているのでなく、病棟全体が上がっていくような感覚に襲われる。

蛇口から水が細く縒れて垂れる

電灯がついていて、後ろの木々に皎々（こうこう）と照っている。

多彩なネオンの縞が輝く夜

硝子に雨の雫を伝わらしている街燈の灯はまるで暗い人生の隅っこに泣きそべっている二人の影のように見えていた。

地平に沈む夕陽

夕方の気配が、街にしのびよってきていた。陽にはかすかにオレンジが混じり、西の雲は明るく光りはじめた。

日が地上を去って行ったあと、路の上の潦（みずたまり）を白く光らせながら空から下りて来る反射光線

（深夜、二つに仕切られた外の共同湯に入っていると）きまって客の湯の方に男女のぽそぽそ話しをする声がきこえる。私はその声のもとを知っていた。それは浴場についている水口で、絶えず清水がほとばしり出ているのである。また男女という想像の由（よ）って来るところもわかっていた。それは溪の上にだるま茶屋があって、そこの女が客と夜更けて湯へやって来ることがありうべきことだったのである。そういうことがわかっていながらやはり変に気になるのである。男女の話声が水口の水の音だとわかっていながら、不可抗的に実体をまとい出す。その実体がまた変に幽霊のような性質のものに思えて来る。いよいよそうなって来ると私はどうでも一度隣の湯を覗（のぞ）いて見てそれを確めないではいられなくなる。

空はまた一面に紫薔薇色の焔を挙げて深まろうとしている。闇を掻き乱そうとしている。