TOP > 暮らしの表現 > 生と死 > 喪失感(大切なものを失う)
「でも、弟が死ねば、わたしもやっぱり、孤児ですね。」 弟が死ねば、なんて考えたくもないのに、言葉だけが勝手にさらさらと流れ出してしまった。自分が喋った言葉の広さだけ胸に隙間ができて、そこに彼の背中から吹いてきた風が舞い込んできた。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:86% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
喪失感(大切なものを失う)
心にぽっかり穴があく
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......ぼ、僕としては。」 わたしはまた彼のセーター越しに、水滴のついた胸の筋肉を思い浮かべた。「でも、……」 その胸は、滑らかで暖かいベッドのように、目の前にあった。「でも、弟が死ねば、わたしもやっぱり、孤児ですね。」 弟が死ねば、なんて考えたくもないのに、言葉だけが勝手にさらさらと流れ出してしまった。自分が喋った言葉の広さだけ胸に隙間ができて、そこに彼の背中から吹いてきた風が舞い込んできた。理想的な筋肉を持った孤児と二人で、鮮やかな秋の陽に包まれていても、やっぱりわたしはどうしようもなく悲しかった。身体が破裂しそうだった。「大丈夫ですよ。こ、孤児に......
単語の意味
背中(せなか)
胸(むね)
背中・・・背の中央。背骨のあたり。動物の胴体の背骨のある側。胸や腹と反対の面で、両肩の間から腰のあたりまでの部分。背(せ)。背面。
ここに意味を表示
喪失感(大切なものを失う)の表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
思い出が思い出としてちゃんと見えるところまで、一日も早く逃げ切りたかった。でも、走っても走ってもその道のりは遠く、先のことを考えるとぞっとするくらい淋しかった。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
目に映るものはそこにたまたまある現実の風景でしかなくなり、聞こえてくるのは現実の音だけだった。あんなに心の中で豊かに息づいていたはずの世界は、乳色の霧にまかれたように、その輪郭すら見えなくなっていた。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
すみれの存在が失われてしまうと、ぼくの中にいろんなものが見あたらなくなっていることが判明した。まるで潮が引いたあとの海岸から、いくつかの事物が消えてなくなっているみたいに。そこに残されているのは、ぼくにとってもはや正当な意味をなさないいびつで空虚な世界だった。薄暗く冷たい世界だった。ぼくとすみれとのあいだに起こったようなことは、その新しい世界ではもう起こらないだろう。ぼくにはそれがわかった。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
一人になると、死んだ息子のことを考えて、よく泣いた。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
心にぽっかり穴があくの表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
胸がからっぽになるような、だるい喪失感になやまされ
太宰治 / 人間失格
このカテゴリを全部見る
胸で悲しみを感じるときの表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
聞き棄ててしまえば何でもない臆病者のこの愚痴がなぜ鋭い針のようにこの胸にこんなに痛くつきさすのか。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
(日記の)全体が持っている悲しい心が、通って行く雲の影のように彼の胸を閉ざして行った。
大仏 次郎 / 宗方姉妹 (1954年) amazon
このカテゴリを全部見る
「悲しみ」カテゴリからランダム5
泣き出しそうな憂鬱な顔
岡本かの子 / 巴里祭
弱々しい嘆息 をあげて
吉川英治 / 雲霧閻魔帳
自分のひそかな絶望の形態が、竹矢来のように、自分の周囲に張りめぐらされた気がした。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
(家族が亡くなってから)ほとんど初めての家で、今まであまり会ったことのない人と向かい合っていたら、なんだかすごく天涯孤独な気持ちになった。
吉本 ばなな / キッチン「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
ネコの死骸そのものより、誰かが殺したという事実が怖い。そこにある意思や感覚が怖い。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
唇の色が青インキをつけたように、ハッキリ死んでいた。
小林多喜二 / 蟹工船
「穴が空いたような」心の空白に、今は止め 処 もなく寂しさが染み出している。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
「寂しい・喪失感」カテゴリからランダム5
部屋の中は火が消えたように淋しかった。
林芙美子 / 新版 放浪記
恐ろしい絶望的な寂寥 に打たれて、激しく泣き出す
宮本百合子 / 伸子
魂の凍りそうな寂寞感
小田 岳夫 / 城外「城外・紫禁城の人―他二篇 (1957年) (角川文庫)」に収録 amazon
腹の底から込み上げて来るような寂しさを覚えた
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
悲しみ の表現の一覧
悲しみのレベル
悲しみの感覚、精神的な反応
悲しみの表情、リアクション
その他の悲しみの表現
次の文字を含む「悲しみ」の表現を検索 |
悲しさが 悲しみを 悲しくて 悲しさ 悲しい 心 哀感 胸 寂しさが 寂しさ |
生と死 の表現の一覧
寂しい・喪失感 の表現の一覧
感情表現 大カテゴリ