ル、ルン。 　突然電話のベルが鳴った。

ル、ルン。 　その時玄関のほうで電話のベルが鳴った。

電話のベルが突然、私を眠りの底からたたきだした。

（電話に小布団を敷くと）ベルは、あきらかに丸くあたたかい音に変った。

（小布団の敷かれていない電話機）じかに置くと、ベルが鳴ったとき耳障りながさつな音を立てる

あやしい楽器（がっき）の音も、もう汽車のひびきや風の音にすりへらされてずうっとかすかになりました。

指にかけられた八寒嘯（はっかんしょう）

（真相にたどり着く）耳から周囲の 喧騒 が遠のいた気がした。四十一年間、 数多 の捜査員たちが追い求めてきた真相に、ついにたどり着いたのだ。

ＲＲＲＲＲと鳴り出した電話のベル

夜空が溶け落ちるように、雨が凄まじい響きを立てている

受話器をとおして沈黙が新月のように部屋にしのびこんできた。息づかいひとつ聞こえなかった。耳が痛くなりそうな完全な沈黙だった。

（黒電話）狭くて急な階段の裏にそれは設置された。 　形容しがたい丸み、暗号めいたダイヤル、耳にフィットするよう計算された受話器のカーブ、可愛らしげにクルクルとカールするコード。そうした何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものでないことにちゃんと気づいていた。 　とにかくその黒色は特別だった。一点の濁りもなく、濃密で、圧倒的で、気高くさえあった。両手に載るほどの大きさなのに、何を 企んでいるのか分からないふてぶてしさと思慮深さを併せ持っていた。そこに一つ黒い 塊 があるだけで、階段裏の薄暗さが奥行きを増すようだった。

（国際電話）時差のことを思うと、いつも不思議な気分になる。かろうじてつながっているそのラインを、貴重に思う。

ル、ルン。 　突然電話のベルが鳴った。

（ダイヤル式の電話）三日月形の留め金のところまで引き絞ったダイヤルが元に戻る時の、小鳥がつぶやくような音を指先に感じながら