水を打ったような静けさがいまこの谿を領していた。何も動かず何も聴こえないのである。その静けさはひょっと夢かと思うような谿の眺めになおさら夢のような感じを与えていた。
梶井基次郎 / 冬の蠅 ページ位置:61% 作品を確認(青空文庫)
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静けさ・静寂
崖・谷・断崖絶壁
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前後の文章を含んだ引用
......えない水も動かない滝が小さく小さく懸っていた。眩暈 を感じさせるような谿底には丸太を組んだ橇道 が寒ざむと白く匍っていた。日は谿向こうの尾根へ沈んだところであった。水を打ったような静けさがいまこの谿を領していた。何も動かず何も聴こえないのである。その静けさはひょっと夢かと思うような谿の眺めになおさら夢のような感じを与えていた。 「ここでこのまま日の暮れるまで坐っているということは、なんという豪奢な心細さだろう」と私は思った。「宿では夕飯の用意が何も知らずに待っている。そして俺は今夜はど......
単語の意味
領する(りょうする)
襟・衿・領(えり)
領する・・・自分の領土にする。自分の所有物とする。
襟・衿・領・・・1.衣服の、首を取り囲む所につけられている部分。また、そこにつける縁どりの布。カラー(collar)。和服では、前で交わる細長い部分やそこにつける布を指す。
2.首の後ろの部分。首筋。うなじ。
3.掛け布団の、首に直接あたる部分にかける細い布。
2.首の後ろの部分。首筋。うなじ。
3.掛け布団の、首に直接あたる部分にかける細い布。
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静けさ・静寂の表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
胸の奥まで、脳みそのひだまで静けさが 染みこんでしまう、圧倒的な無音の世界だった。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
自分の声のひびきに、一種の不気味さを感じるほど、そこは静かである。
吉川英治 / 銀河まつり
その気味の悪い静けさは、死人の呼吸も聞えるかと疑われるくらい
夢野久作 / ドグラ・マグラ
耳栓をつけて湖の底に座っているような静かさ
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
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崖・谷・断崖絶壁の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
覆い被さってくるかのようなオーバーハング帯。この逆層の壁は、まるで天空に住む巨人の屋敷から迫り出した庇だ。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
有島武郎 / 生まれいずる悩み
川を圧して聳え立つ蜒々たる大絶壁
菊池 寛 / 恩讐の彼方に amazon
切り開いたばかりのなまなましい崖
川端 康成 / 掌の小説 amazon
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「音の響き」カテゴリからランダム5
川音は賑わい、まるで誰かがしゃべっているよう
萩原葉子 / 蕁麻の家 amazon
そのピアノの音色には、手帖を見ながら作った不出来なお菓子のような心易さがあり
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
「地上・陸地」カテゴリからランダム5
草原が砂丘のように、ゆるやかに起伏した
大岡 昇平「野火(新潮文庫)」に収録 amazon
何か大きな動物の背のような感じのするこの山の姿
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
毛物(獣)の形をした山が、巨(おお)きな顎を海峡に浸して潮を飲む
内田 百けん / 冥途 amazon
やや湿地がかった平野で、田圃 と多少の高低のある沢地がだるく入り混っていた。
岡本かの子 / 東海道五十三次
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