この無残にも形を失った顔は、まるで死がこの上を兇暴な力をふるいながら嵐のように通り去り、荒井幸夫のなかに動いていた生命を 生 胆 を抜くかのようにひっさらって行ってしまったという風に見える。
野間宏 / 崩解感覚「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 ページ位置:10% 作品を確認(amazon)
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死人・遺体
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前後の文章を含んだ引用
......ねじれてつり上った口からつき出た太い白い舌の先。黒眼を眼の隅のところに寄せてしまって白膜をはったような両眼。太い二本の鼻汁が、膿の塊のように口の上にたれている。この無残にも形を失った顔は、まるで死がこの上を兇暴な力をふるいながら嵐のように通り去り、荒井幸夫のなかに動いていた生命を生胆を抜くかのようにひっさらって行ってしまったという風に見える。及川隆一は思わず顔を後に引いた。そしてその死体の顔の凹部──眼や頰や口の上に刻印のようについている苦悶の跡が彼の眼の中に打ち込む烈しい衝撃に抗った。が彼はそのま......
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死人・遺体の表現・描写・類語(人の印象のカテゴリ)の一覧 ランダム5
ネグリジェの中の体は冷えた粘土のように堅く、重かった。
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
遺体は腐敗してどす黒く変色し、生前の面影を完全に失っていた。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
(娘の死体を見る)母親は自身とは急に遠くなった物でも見るような一種 悽惨 な 冷淡 さを顔に表わして見ていた。
志賀 直哉 / 正義派「城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)」に収録 amazon
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「人の印象」カテゴリからランダム5
病める鶴のように長羅の胸の上に垂れていた。
横光利一 / 日輪
せきとめられた人の流れが、港内の泡のようにゆっくりと動く
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
brilliantという字の化身のようなそのお方
堀 辰雄 / 菜穂子 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
鋭い目をした野鳥のように飛びこんできた
芝木 好子 / 隅田川暮色 amazon
かすかな産声が、息もつけない緊張の沈黙を破って細く響く
有島 武郎 / 小さき者へ amazon
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