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自分の影を両側の街燈が次には交互にそれを映し出した。後ろから起って来て前へ廻り、伸びて行って家の戸へ頭がひょっくり擡 ったりする。慌 しい影の変化を追っているうちに自分の眼はそのなかでもちっとも変化しない影を一つ見つけた。極く丈の詰った影で、街燈が間遠になると鮮 かさを増し、片方が幅を利かし出すとひそまってしまう。「月の影だな」と自分は思った。見上げると十六日十七日と思える月が真上を少し外れたところにかかっていた。自分は何ということなしにその影だけが親しいものに思えた。
梶井基次郎 / 泥濘 ページ位置:89% 作品を確認(青空文庫)
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影
街灯・外のあかり
光に照らされた顔や姿
月の光・月明かり
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前後の文章を含んだ引用
......が変に耳についた。坂の中途に反射鏡のついた照明燈が道を照している。それを背にうけて自分の影がくっきり長く地を這 っていた。マントの下に買物の包みを抱えて少し膨 れた自分の影を両側の街燈が次には交互にそれを映し出した。後ろから起って来て前へ廻り、伸びて行って家の戸へ頭がひょっくり擡 ったりする。慌 しい影の変化を追っているうちに自分の眼はそのなかでもちっとも変化しない影を一つ見つけた。極く丈の詰った影で、街燈が間遠になると鮮 かさを増し、片方が幅を利かし出すとひそまってしまう。「月の影だな」と自分は思った。見上げると十六日十七日と思える月が真上を少し外れたところにかかっていた。自分は何ということなしにその影だけが親しいものに思えた。 大きな通りを外れて街燈の疎 らな路へ出る。月光は初めてその深祕さで雪の積った風景を照していた。美しかった。自分は自分の気持がかなりまとまっていたのを知り、それ以......
単語の意味
見上げる(みあげる)
詰る(なじる)
間遠(まどお)
見上げる・・・1.下から上のほうを見る。
2.立派だなぁ、と感心する。
2.立派だなぁ、と感心する。
詰る・・・相手を問い詰めて非難する。相手の悪い点を責める。
間遠・・・繰り返される物事の間に間隔があいているさま。「訪問が間遠になる」
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家や大きな木立の影は、行手に立ちはだかる物の怪のようにも見える。
藤沢 周平 / 麦屋町昼下がり amazon
背後にある夕日が、影を槍のように長く尖らせる
原田 宗典 / 十九、二十(はたち) amazon
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街灯・外のあかりの表現・描写・類語(光と影のカテゴリ)の一覧 ランダム5
小屋がけの見世物やの灯が、ほおずきみたよに見えましてなァ
宇野 千代 / おはん amazon
電灯がついていて、後ろの木々に皎々 と照っている。
梶井基次郎 / 城のある町にて
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光に照らされた顔や姿の表現・描写・類語(光と影のカテゴリ)の一覧 ランダム5
陽にすけると私の髪って金髪。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
彼女は、駅の灯に顔を横から照らされて彫像のように見える。
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
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月の光・月明かりの表現・描写・類語(空・中空のカテゴリ)の一覧 ランダム5
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「空・中空」カテゴリからランダム5
月の夜の明るさが万象に影を失わせ、その隈どりが浮き上がって見えるように思える
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
青白い月光が夢のようにそのあたりの風物を包む
志賀 直哉 / 志賀直哉小説選〈1〉(濁った頭) amazon
星空が神話の英雄を映して彼の心を慰めてくれた。
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
「光と影」カテゴリからランダム5
モミジの枝が、強く鋭いスポットライトを独り占めしていた。
綿矢 りさ / 亜美ちゃんは美人「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
彼女は、駅の灯に顔を横から照らされて彫像のように見える。
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
黒い獣じみた影
吉川英治 / 野槌の百
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からだにまとわりつく魚の匂いを落とすようにシャワーを浴びる
向田 邦子 / 思い出トランプ amazon
街灯が光の輪を路地に落とす
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
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練馬大根のように健康で太々とした女性
獅子 文六 / てんやわんや amazon
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