ただ茹でただけの卵の白球を通しておでんの汁が染み込んでいる球はいつ食べても間違いがない。

おでん屋は開店から２時間後位に行くと、よい煮上り具合のたねにありつける。まず店の味付けの傾向を知るため、大根やこんにゃくなど、長い煮込み時間の必要なものから注文してみる。

おでんは郷土料理であり、すべての日本人のおふくろの味。故郷や家族だんらんに直結するおでんは人の心を豊かにする。

有名なおでん屋さんもあるが、コンビニでもおでんが食べられるので、昔と同様に庶民の味、手軽なイメージがある。

しみじみと味わう正統派のおでんもいいが、おすすめは、タレで楽しむおでん。いつものおでんもタレをつけるだけで、違った味わいが楽しめる。

味噌のコクも砂糖の甘みも最初は主張しないのだ。自分は脇役と心得て、控えめに素材に寄り添っている。どんな味だい、はっきりおし、と迫れば際限なく逃げる。逃げられれば追うのが人情。追うほどに深みにはまる。気が付けば味噌どぶどろの底なし沼。

アサツキ、菜の花、ギンナン、赤貝のわた、糸瓜（へちま）、菊、薔薇（ばら）などをたんねんに切りととのえ、味噌と胡麻（ごま）で和えたものだが、その味の複雑微妙、しかもコクのある味つけには、だれしも、 「うまい」 　と、いわざるを得ない

から揚げ自体の味で十分。だから私は何もかけない。

みそ仕立ての雑煮

青竹の串（くし）に差した田楽の豆腐に塗ってある味噌（みそ）に木の芽が匂（にお）った