TOP > 風景表現 > 時間帯(朝・昼・夜) > 夜の街並み
F市は今夜も灯を消して空襲にそなえていた。警報の有無にかかわらず、街は夜になれば、僅かな光さえ外に洩らさない。灯を洩らさぬのではなく、灯をつける家も人間もすっかり死に果てたようだ。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 ページ位置:94% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
夜の街並み
空襲・空爆
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......に出た戸田はひくい声で訊ねた。「ああ」「お前、煙草、喫ってんのか」 勝呂は返事をしなかった。彼は屋上の手摺りに靠れて、あごを両手の上においたまま前をむいている。F市は今夜も灯を消して空襲にそなえていた。警報の有無にかかわらず、街は夜になれば、僅かな光さえ外に洩らさない。灯を洩らさぬのではなく、灯をつける家も人間もすっかり死に果てたようだ。「なにしてんねん、お前」「なにも、してへん」 だが戸田は勝呂がそこだけ白く光っている海をじっと見詰めているのに気がついた。黒い波が押しよせては引く暗い音が、砂の......
ここに意味を表示
夜の街並みの表現・描写・類語(時間帯(朝・昼・夜)のカテゴリ)の一覧 ランダム5
ゆるやかな坂に沿って並ぶ店のウインドウが、ずらりと夜に浮かぶ
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
見慣れてきたはずの町並みも、真夜中に和弥さんと二人きり、車に乗って走り抜けると、初めて訪れた見知らぬ町のように思えました。
湊 かなえ「花の鎖 (文春文庫)」に収録 amazon
夜になると通りを走る車のライトと店の灯りで、日中とはまた別の街のように見えた。
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon
ビルとビルとビルの間に囲まれた小さな夜空を風が渡って行った。
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
空襲・空爆の表現・描写・類語(イベントのカテゴリ)の一覧 ランダム5
本館の屋上にのぼると、日ごとにF市の街が小さくなっていくのがよくわかる。実感としては小さくなると言うよりは焼けた部分が黄いろい砂漠のように毎日、拡っていくのだ。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
(空爆の直後)夕暮になって、やっと敵機が姿を消した。すると、おそろしいほど、あたりは静かになった。空がどす黒くよごれ、耳をすましているとパチ、パチと焼ける音にまじって、鈍いうつろな反響が聞えてくる。最初、ぼくはその反響に気がつかなかったのだ。けれどもその虚ろな 呻き声に似たものは次第にはっきり聞きとれてきたのである。《…略…》それは確かに多くの人間たちの呻き声に似ていた。医者であるぼくはあの呻き声は知っている。恨み悲しみ、悲歎、 呪詛、そうしたものをすべてこめて人々が呻いているならば、それはきっと、こんな音になるにちがいなかった。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
もう空襲警報も警戒警報もないようだった。鉛色をおびた低い冬の雲のどこかで絶えず、ごろん、ごろんと鈍い響きがきこえ、時々思いだしたようにパチ、パチと、豆のはじけるような音がした。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
(空襲直後)屋上に登るとF市の東西南北から一斉に白煙がたちのぼっている。煙がうすれるたびにダイダイ色の炎がゆれるのがはっきりと見えた。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「時間帯(朝・昼・夜)」カテゴリからランダム5
日の光の新しい午前の往来
梶井基次郎 / のんきな患者
「イベント」カテゴリからランダム5
(新人発掘)澄んだ夜空を見渡して、誰よりも先に新しい星を見つけるのは胸躍るものだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
同じカテゴリの表現一覧
時間帯(朝・昼・夜) の表現の一覧
イベント の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ