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避けようのない殺人者を前にしたように気力を失い、虚脱した人間になりかかっていることが分った。
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 ページ位置:12% 作品を確認(amazon)
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脱力・力が抜ける
弱気・めげる・自信を失う
余命宣告・死の覚悟
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......に備える事務的なことをしていると自分の生涯の終りがなまなましく表面に浮び上ってきた。そんな行為の自分をそばから放心したように眺めているような自身に気づき、もはや避けようのない殺人者を前にしたように気力を失い、虚脱した人間になりかかっていることが分った。 孝子も周囲の者も桑木のそうした動揺を神経質だとか気が弱すぎるとか云ったし、彼自身もときにそう考えないでもなかった。実際、胃癌でも助かっている人が少なくないので......
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脱力・力が抜けるの表現・描写・類語(嫌いのカテゴリ)の一覧 ランダム5
母から離れた赤子のように、すべての力が急にどこかに消えてしまう
有島武郎 / 或る女
太宰治 / 走れメロス
あやつり人形が人形師の手を離れたように、身体中の力が抜けて行く
山田 太一 / 飛ぶ夢をしばらく見ない amazon
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弱気・めげる・自信を失うの表現・描写・類語(その他の気分のカテゴリ)の一覧 ランダム5
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余命宣告・死の覚悟の表現・描写・類語(生と死のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(弟の余命は十三カ月と告げられる)「十三カ月……」 その数字をかみくだくのに、少し時間がかかった。今まで十三カ月などという数字について、しみじみと考えたことがなかったからだ。十三カ月で人は何ができるのだろう。赤ん坊なら立って歩くことを覚える。浪人生は大学生になり、恋人同士は夫婦になる。いろいろな尺度でその数字を測ろうとした。けれど、弟にとっての十三カ月がどんなものになるのか想像しようとすると、胸の中で、熟れすぎた果肉がべちゃべちゃと潰れていくように気持ち悪く息苦しくなって、うまく考えをまとめることができなくなった。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
人は自分の死を自覚したときから、生きる希望と死への折り合いをゆるやかにつけていくだけなんだ。たくさんの些細な後悔や、叶えられなかった夢を思い出しながら。
川村 元気 / 世界から猫が消えたなら amazon
(ジャングルをさまよう日本兵のが感じた死の予感)比島の熱帯の風物は私の感覚を快く揺った。マニラ城外の柔らかい芝の感覚、スコールに洗われた 火焔 樹 の、眼が覚めるような朱の 梢、原色の朝焼と夕焼、紫に 翳る火山、 白浪 をめぐらした 珊瑚礁、水際に蔭を含む叢等々、すべて私の心を 恍惚 に近い歓喜の状態においた。こうして自然の中で絶えず増大して行く快感は、私の死が近づいた確実なしるしであると思われた。
大岡 昇平「野火(新潮文庫)」に収録 amazon
死病を宣告されると、これまで想を練っていた新しい方向がひどく鮮明に浮んできた。事実、その着想を得たときは昂奮して二、三日は夜も眠れなかった。その後もずっとその考えを追ってきたのだけれど今までぼんやりとしていたそれがここで明確になってきた。それも生きる期間を制限されて気持が急に真剣になったものか、神経的な感覚が尖鋭になったものかよく分らなかった
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
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焙豆(いりまめ)の豆が顔にぴんと痛く弾きかかったように癪(しゃく)にさわって小憎らしくなった。
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
「その他の気分」カテゴリからランダム5
自分の願いが霞のように蒸発してゆくのを感じる。《…略…》純粋な願いはゆらゆらと立ち昇って手触りがなくなってしまう。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
岡本かの子 / 金魚撩乱
自分を支える現実がゆらぐような、あの めまい
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
(訃報の)葉書を読み返し、念のために表も確認して、またしばらく文中の「他界」という文字を見つめていた。その言葉には、自分が知っている以外の、何か他の意味があっただろうかという風に。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
どうせ自分自身は電子か何かになって、箒星 のお先走りでも承 るつもりでいたし
夢野久作 / ドグラ・マグラ
秋の終わりごろに風もないのに木の葉が一枚落ちるみたいな、そんな感じ(の死に方)
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
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