黄色い粒。花粉だ。神去村には山しかなく、その山はほとんど杉とヒノキで覆われている。脅威の花粉包囲網だ。 山の杉が、枝のさきっちょに茶色い実みたいなもんをつけはじめた。俺は最初、「なにかなー、あれ」と思ってた。そのうち実の色は濃さを増し、遠目には杉が枯れたみたいになってしまった。《…略…》枯れ山のようになって村を取り巻く
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 ページ位置:19% 作品を確認(amazon)
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山
花粉
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前後の文章を含んだ引用
......機会に書こう。 なんにしろ、春が一番だ。春のわくわくするような気持ちと、花や土や水の香りがまじりあった空気の甘さに、かなうものはない。 ただひとつ問題といえば、黄色い粒。花粉だ。神去村には山しかなく、その山はほとんど杉とヒノキで覆われている。脅威の花粉包囲網だ。 山の杉が、枝のさきっちょに茶色い実みたいなもんをつけはじめた。俺は最初、「なにかなー、あれ」と思ってた。そのうち実の色は濃さを増し、遠目には杉が枯れたみたいになってしまった。 そうしたら、巌さんがクシャミを連発しだしたんだ。清一さんは山仕事のときにごついゴーグルをかけるようになり、クールな表情は変えないまま、いつも静かに鼻水を垂らし......<中略>......取られ、叱るのを忘れたってだけかもしれない。 巌さんはクシャミとクシャミのあいだに言った。「あの茶色いのは、実とちゃう。杉の雄花や」「えっ、あれが全部ですか」 枯れ山のようになって村を取り巻く斜面を、俺は呆然と見渡した。ヨキが楽しそうに補足する。「いまはまだええ。もうちょっとしたら、今度は真っ黄色になるで。風が吹くたびに枝が揺れて、花粉が黄色い霧みた......
単語の意味
遠目(とおめ)
遠目・・・1.遠方までよく見える目。
2.遠くの方から見ること。また、遠くから見たようす。
3.遠くの方しか見えず、近くの物体や細かい文字がはっきり見えない目。また、その状態。遠眼(えんがん)。遠視(えんし)。 ⇔ 近目(ちかめ)。
4.普通より遠いさま。 ⇔ 近目(ちかめ)。
2.遠くの方から見ること。また、遠くから見たようす。
3.遠くの方しか見えず、近くの物体や細かい文字がはっきり見えない目。また、その状態。遠眼(えんがん)。遠視(えんし)。 ⇔ 近目(ちかめ)。
4.普通より遠いさま。 ⇔ 近目(ちかめ)。
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山の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
影絵のように向こうの白い山はだに影が映る
遠藤 周作 / 何でもない話 amazon
ちぎれ雲の影が山の日向を後から後から忙しげに通り過ぎるような日和
永井 龍男 / 一個・秋・その他 amazon
川の左に聳(そび)える荒削りされたような山
菊池 寛 / 恩讐の彼方に amazon
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花粉の表現・描写・類語(植物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
軟らかな風が涼しく吹いて松の花粉が埃のように湿った土を掩うて
長塚 節 / 土 amazon
山で仕事をしていると、花粉がもわもわ降ってくる。降り注ぐ花粉で、山の斜面は真っ黄色だ。作業が終わる夕方には、俺たちは衣をまぶして揚げるばかりになったフライみたいなありさまだった。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
裏山の杉の花粉が霞のように東風に煙って流れ
大原 富枝 / 婉という女 (1963年) amazon
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「地上・陸地」カテゴリからランダム5
住人の大半は六十歳以上だ。生活用品を売っている店は一軒しかない。郵便局も学校もない。切手を買ったり小包を出したりしたければ、手紙を配達しにくる郵便局員に頼む。宅配便は、中地区まで行って出すしかない。ちょっとした買い物をしたいときは、山をいくつも越えて久居という町まで車で行く。 不便を絵に描いたような場所だ。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
(山が)ドッシリ腰を下したといった感じでそびえている。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
クウェートはイラクとサウジアラビアにはさまれた、ペルシャ湾に面した小さい石油国である。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
「植物」カテゴリからランダム5
岡本かの子 / 母子叙情
白い花を載せた浅緑の葉や、赤い花を包んだ深緑の葉
岡本かの子 / 巴里のキャフェ
すっかり葉を落とした櫟(くぬぎ)や樫(かし)が、叩けばかあんと音を立てそうな固さで静かに立っている
黒井 千次 / 春の道標 amazon
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