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せき は少しも口を 利かず、賛次郎のいるさえ意識しないように、ぼんやり遠い一点を見つめて歩いていた。その様子が賛次郎には何か せき がそこに或る 幻影 を認め、それを見つめることから気の遠くなるような 陶酔 を感じているのではないかしらという気がふとして来た。打ち砕かれた淋しさの不機嫌としてはあまりにその眼は何かを 夢見ていた。いかにも甘い夢だ。それに酔う一種の 喪心 状態に思われた。
志賀 直哉 / 雨蛙「城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)」に収録 ページ位置:70% 作品を確認(amazon)
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うっとり・心奪われた表情
上の空・心ここにあらず
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前後の文章を含んだ引用
......を曳き、二人は肩を並べて歩いた。熟れ切った稲の香が強く鼻へ来る。足元からうるさく稲子が飛び立った。逃げまどった一疋がせきの肩に止り、暫く二人の道連れになった。 せきは少しも口を利かず、賛次郎のいるさえ意識しないように、ぼんやり遠い一点を見つめて歩いていた。その様子が賛次郎には何かせきがそこに或る幻影を認め、それを見つめることから気の遠くなるような陶酔を感じているのではないかしらという気がふとして来た。打ち砕かれた淋しさの不機嫌としてはあまりにその眼は何かを夢見ていた。いかにも甘い夢だ。それに酔う一種の喪心状態に思われた。賛次郎には変にはっきりとせきのその心持が映って来た。彼は思わず頰に血の昇るのを感じた。胸の動悸を聴いた。力に溢れ切ったようなと言われるGと、この美しい肉付のせき......
単語の意味
陶酔(とうすい)
陶酔・・・気持ちよく酔うこと。心を奪われてうっとりと気持ちのいいこと。
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うつくしい夢のように、うっとりした目でながめていた。
芥川龍之介 / 偸盗
その人のかたわらにでもいるように恍惚 とした顔つき
有島武郎 / 或る女
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上の空・心ここにあらずの表現・描写・類語(その他の気分のカテゴリ)の一覧 ランダム5
その声は僕の耳をすり抜けていくだけだった。別のことを考えていた。
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon
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切ない胸の中が、もうからりと晴れるよな心持
宇野 千代 / おはん amazon
まるで向日葵のような笑顔を向けて、パタパタと私の元に駆けてきた。それだけで最近多忙で沈みがちだった私の心は、パッと明るくなった。笑顔って本当にスポットライトみたいだと思う。
金沢 優「もしも高校四年生があったら、英語を話せるようになるか」に収録 amazon
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晋平が酔ってはいないことを信雄は知っていた。それは 坐り慣れた膝の上の感触でわかる。父の膝は、酔うといつもぐにゃりと力 萎える。
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
酒に酔えば泣きじょうこ
林芙美子 / 新版 放浪記
傷ついた小さな獣が命がけで反撃しているかのような姿
内館 牧子 / あしたがあるから amazon
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