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(山から見下ろした夜明けの風景)山裾の靄は晴れ、 麓 の村々の電燈が、まばらに眺められた。 米子 の 灯 も見え、遠く 夜見ケ浜 の 突先 にある 境港 の灯も見えた。或る時間を置いて、時々強く光るのは 美保 の 関 の燈台に違いなかった。湖のような 中 の 海 はこの山の陰になっている為 未だ暗かったが、 外海 の方はもう海面に鼠色の光を持っていた。 明け方の風物の変化は非常に早かった。 少時 して、彼が振返って見た時には山頂のむこうから 湧き上るように 橙色 の 曙光 が昇って来た。それが見る見る濃くなり、やがて又 褪せはじめると、 四辺 は急に明るくなって来た。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:87% 作品を確認(amazon)
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夜明け
見下ろした風景
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前後の文章を含んだ引用
......か、四辺は青味勝ちの夜明けになっていた。星はまだ姿を隠さず、数だけが少なくなっていた。空が柔らかい青味を帯びていた。それを彼は慈愛を含んだ色だと云う風に感じた。山裾の靄は晴れ、麓の村々の電燈が、まばらに眺められた。米子の灯も見え、遠く夜見ケ浜の突先にある境港の灯も見えた。或る時間を置いて、時々強く光るのは美保の関の燈台に違いなかった。湖のような中の海はこの山の陰になっている為未だ暗かったが、外海の方はもう海面に鼠色の光を持っていた。 明け方の風物の変化は非常に早かった。少時して、彼が振返って見た時には山頂のむこうから湧き上るように橙色の曙光が昇って来た。それが見る見る濃くなり、やがて又褪せはじめると、四辺は急に明るくなって来た。萱は平地のものに較べ、短く、その所々に大きな山独活が立っていた。あっちにもこっちにも、花をつけた山独活が一本ずつ、遠くの方まで所々に立っているのが見えた。その他......
単語の意味
曙光(しょこう)
風物(ふうぶつ)
晴れ(はれ)
曙光・・・1.夜、東の空に差してくる夜明けの光。暗闇の中で見え始める、最初の光。
2.物事の前途に見え始める、わずかな希望。
2.物事の前途に見え始める、わずかな希望。
晴れ・・・1.天気がいいこと。雨や霧などが伴わない天気。空に雲が少ない、もしくはまったく無い状態。
2.多くの人から注目されて、光栄に思うこと。待ちに待った、めったにない機会であること。晴れがましいこと。正式なこと。公式なこと。
3.疑いが解けて、自由になること。「晴れて自由の身になる」
2.多くの人から注目されて、光栄に思うこと。待ちに待った、めったにない機会であること。晴れがましいこと。正式なこと。公式なこと。
3.疑いが解けて、自由になること。「晴れて自由の身になる」
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夜はまだ完全に明けきらず、これから昇る太陽が、東の空を 萌葱色に染めている様は言葉を忘れてみとれてしまうほど美しい。
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
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遥か真下に糸のような細さに見える渓流
中島 敦 / 中島敦 amazon
見晴らす広漠とした河原に石と砂との無限の展望。
岡本かの子 / 東海道五十三次
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家の軒端からのぼる朝の煙が、光を透して紫の羅(うすもの)のように柿の枝にまつわった。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
あや目も知れない闇 の中から、硫黄 が丘 の山頂――右肩をそびやかして、左をなで肩にした――が雲の産んだ鬼子のように、空中に現われ出る。鈍い土がまだ振り向きもしないうちに、空はいち早くも暁の光を吸い初めたのだ。
有島武郎 / 生まれいずる悩み
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蜂の巣を伏せたような、こんもりとした小さな島
大庭 みな子 / 三匹の蟹 amazon
山々が重なり合って、次第に遠く春霞のなかに溶けこむ
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
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