この瀬にはことにたくさんの河鹿がいた。その声は瀬をどよもして響いていた。遠くの方から風の渡るように響いて来る。それは近くの瀬の波頭の間から高まって来て、眼の下の一団で高潮に達しる。その伝播 は微妙で、絶えず湧 き起り絶えず揺れ動く一つのまぼろしを見るようである。
梶井基次郎 / 交尾 ページ位置:83% 作品を確認(青空文庫)
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鳴り響く・轟く
川
虫の音
蛙(かえる)
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前後の文章を含んだ引用
......のそばまで歩いて行った。すると彼らの音楽ははたと止まった。しかし私は既定の方針通りにじっと蹲 まっておればよいのである。しばらくして彼らはまた元通りに鳴き出した。この瀬にはことにたくさんの河鹿がいた。その声は瀬をどよもして響いていた。遠くの方から風の渡るように響いて来る。それは近くの瀬の波頭の間から高まって来て、眼の下の一団で高潮に達しる。その伝播 は微妙で、絶えず湧 き起り絶えず揺れ動く一つのまぼろしを見るようである。科学の教えるところによると、この地球にはじめて声を持つ生物が産まれたのは石炭紀の両棲類 だということである。だからこれがこの地球に響いた最初の生の合唱だと思うとい......
単語の意味
響もす(どよもす・とよもす)
響もす・・・音や声を響かせる。どよめかせる。
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川の表現・描写・類語(水面・水中・水辺のカテゴリ)の一覧 ランダム5
黄金色に光るキタヨシ原の中にコバルトブルーの川が蛇行する
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
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虫の音の表現・描写・類語(昆虫・虫のカテゴリ)の一覧 ランダム5
虫の音の雨のようにみちた一夜
久保田 万太郎 / 市井人「市井人・うしろかげ (1950年)」に収録 amazon
月明かりに照らし出されたゴルフ場の芝では何千匹という秋の虫が折り重なるように鳴き続けている。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
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蛙(かえる)の表現・描写・類語(水中の生き物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
きろきろきろきろと風船玉を擦り合わせるような蛙の声
長塚 節 / 土 amazon
大きな蟇 が横腹の辺に朽葉を貼りつけて眼の先に蹲 っている。
岡本かの子 / 東海道五十三次
食用蛙が牛の遠吠えみたいに啼く
田辺 聖子 / 休暇は終った amazon
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「水面・水中・水辺」カテゴリからランダム5
日の出とともに、海と空に初夏のみずみずしい青さが返ってる
畑正憲 / 天然記念物の動物たち amazon
朱を流しながら灼熱の太陽をどっぷり飲み込んでいく海
宮尾登美子 / 楊梅 amazon
「水中の生き物」カテゴリからランダム5
熱帯魚が閃くように泳ぐ
有吉 佐和子 / 三婆 amazon
蝉の抜け殻のような小さな蟹
中島 敦 / 環礁 ——ミクロネシヤ巡島記抄—— amazon
小蛙は二間も上の枝の上に、青い小さな一点となって、ちょうど草の葉っぱのようにくっついた。
坪田 譲治 / 風の中の子供 amazon
「音の響き」カテゴリからランダム5
ベルの鳴り方から、相手が小松であることは想像がついた。うまく説明できないのだが、小松のかけてくる電話はいつだってそれとわかる。ベルの鳴り方が特殊なのだ。文章に文体があるように、彼がかけてくる電話は独特なベルの鳴り方をする。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
雷鳴は続いていた。しかし稲妻は見えない。遠い砲声のような音が轟いているだけだ。戦場はまだ彼方にある。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
(音色)「平べったい音が、丸くなった感じ」 それを聞いて、ようやく理解した。弛緩していた音が、水滴のようにきゅっと丸くなった、ということらしい。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 amazon
「昆虫・虫」カテゴリからランダム5
そとでは虫が織るようにないている
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
荷車に山のように白い豆腐のおからが盛りあげて、蠅 がゴマのようにはじけている。
林芙美子 / 新版 放浪記
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