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地上・陸地の比喩を使った文章の一覧(440件)
林の中で時折ばたばたという鳥の羽ばたきのような音が聞こえた。部分的に拡大されたような妙に鮮明な音だった。
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
僕は奇妙に非現実的な月の光に照らされた道を辿って雑木林の中に入り、あてもなく歩を運んだ。そんな月の光の下ではいろんな物音が不思議な響き方をした。僕の足音はまるで海底を歩いている人の足音のように、どこかまったく別の方向から鈍く響いて聞こえてきた。時折うしろの方でかさっという小さな乾いた音がした。夜の動物たちが息を殺してじっと僕が立ち去るのを待っているような、そんな重苦しさが林の中に漂っていた。
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
様々な音が混じりあったやわらかなうなりが、雲のように街の上に浮ぶ
村上 春樹 / 螢・納屋を焼く・その他の短編 amazon
富士山のてっぺんに、ガラス綿のようなちぎれた雲が、かんむりみたいに、馬の吐く息みたいにかかる
阿部 昭 / 千年・あの夏 amazon
水平線にたたずむ雲が逆光を浴びて、白いカーテンのように見える
福永 武彦 / 草の花 amazon
かつて聞いたこともないほどの数知れない小鳥のさえずりが、嵐のように吹きこんでくる
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
「あそこなんだか作りそこねた落とし穴みないなところじゃない?」
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
ざっざっざっと巨大なホースで水を撒いているような音を立てて、雨が頭の上のトタン屋根の上を走っていく音が聞こえる
椎名 誠 / 新橋烏森口青春篇 amazon
櫛の歯のように生えている竹林にさしこんでいる陽が、苔の生えた地面に、雨のようにそそぐ
水上 勉 / 越前竹人形 amazon
田圃(たんぼ)の真ん中に、まるで蜃気楼のように出現したマンモス団地
後藤 明生 / 挾み撃ち amazon
動くものの影とてない荒涼たる砂の海
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
帯のように、一筋の道は挟んで左右に家が並ぶ
山本 周五郎 / やぶからし amazon
斜面に鳥の群れのようにとまっている家々
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
細い坂路の両側に家々が覆いかぶさるようにして並ぶ
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
二階建ての一軒の家ほどの巨岩がそびえ立つ
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
暑さによどみ、がっくり肩を落とした木造の家並み
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
頭に火山礫の色を戴(いただ)い厳めしい姿で、富士が窓一面にかぶさって来る
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
石が生き物のように唸りながら転がり落ちる
川端 康成 / 掌の小説 amazon
石が、木漏れ日に生きもののようにちらちらと影を映す
梅本 育子 / 桃色月夜 amazon
遥か真下に糸のような細さに見える渓流
中島 敦 / 中島敦 amazon
丘の緑の縞に黒い影の糸が織り込まれる
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
峡谷の底を流れる川が一条の光る糸となって蛇行する
新田 次郎 / 縦走路 amazon
イナゴの大群が通り過ぎた跡のごとく、食物という食物が喰いつくされて、青草一本残されぬ有り様
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
山々が蠑螈(いもり)の背のように黒い
志賀 直哉 / 焚火 (1953年) amazon
急な丘が錯綜し、谷が迷路のように入り組む
大岡 昇平 / 野火 amazon
晴れた冬の日のアルプスの山々が、岩の殿堂のように厳かに立ち並ぶ景観
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
羊の群れのように見える白い岩
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
たち並ぶ家々の軒並がくっきり影絵のように浮かび上がる
山崎 豊子 / 暖簾 amazon
牛が寝ているように奥深く豊かな形をしている山
中河 与一 / 天の夕顔 amazon
海に向かって開いた奥深い谷の真ん中をめがけて、牛がのさばりでたような格好をしている峰
中 勘助 / 銀の匙 amazon
山も、川も、おぼろに霞んで、ひとつにとけ合っている風景が、夢のように美しい
白洲 正子 / 能の物語 amazon
影絵のように向こうの白い山はだに影が映る
遠藤 周作 / 何でもない話 amazon
山々が海のうねりのように波を果てしなくたたんでいる
松本 清張 / 空白の意匠―松本清張短編全集〈10〉 amazon
ふっくらした大きな饅頭を並べたような柔らかい丘の起伏
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
ほとんどあるかないかのわずかな起伏が、平原に掃いたような陰翳を曳(ひ)く
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
娘達が栗毛の駿馬のように街を歩く
川端 康成 / 掌の小説 amazon
街の賑わいが海の音のようにほの暗い店の中に染み入る
原田 康子 / 挽歌 amazon
ぱっと青海原に泳ぎ出たような開豁な場所
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
海のように荒れくるい、また静まる厖大な森
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
ひしめき叢(むらが)る樹木つづきの緑の海
本庄 陸男 / 石狩川〈上〉 amazon
山から見下ろすとまるで豊かな海のようにも見えた一面の桑畑
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
夜の森は静かに荒くるう海のよう
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
連山の襞(ひだ)に、夕日が絵のように美しく光線を漲らす
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
列車が着くたびに猫の額ほどの駅前広場が人波で埋まる
西木 正明 / 『幸福』行最終列車 amazon
濃い緑の草や木の色が油絵の具のように生々して見える
徳田 秋声 / あらくれ amazon
燦然と絵巻のような景色が展開する
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
小松の茂った山が盆を伏せたように煙る
水上 勉 / 雁の寺 amazon
昼寝しているような静かな住宅街
三上 延 / ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち amazon
丘が、三角の頂上から両足をふんばったように、二つの小尾根を左右に投げ落とす
大岡 昇平 / 野火 amazon
禿鷹の頭のように見える真っ黒な丘
長与 善郎 / 青銅の基督 amazon
丘が紺碧の空に女の脇腹のような線をひとしおくっきりと浮き出させる
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
丘の群れが、薄化粧した女のように、白く霞んで静まり返る
大岡 昇平 / 野火 amazon
見晴るかす平原の中に、島のようにひとつ取り残されている丘陵
井上 靖 / 風林火山 amazon
地形が起伏に富み段丘が波のように畳なわっている
森村 誠一 / 深海の迷路 amazon
ぬっと胸を突きだしたような段丘
本庄 陸男 / 石狩川〈上〉 amazon
屏風のように連なる丘
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
のんびりとした感情を持ってうねっている優雅な曲線の丘
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
人波が、水溜りのお玉じゃくしの群れのように、後から後から押して来ては揺れ動く
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
活気を帯びた雑踏の音が津波のように寄せてくる
森 瑤子 / 傷 amazon
童話に出てくる都市のような美しい町
遠藤 周作 / 何でもない話 amazon
山にせまられて帯のように細い領地
海音寺 潮五郎 / 執念谷の物語 amazon
眼下に広がる街の夜景を見下ろしていた。街はまるで平板な鋳型に流し込まれたどろどろした光のように見える。あるいは巨大な蛾が金粉を撒きちらした後のようにも見える。
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
山肌を這いのぼってきた若松の香気が、灰を驚かすほどの冷たさ
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
青銅(ブロンズ)製の鏡のように鈍く光る泥溜まり
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
集落が海べりに牡蠣のようにしがみついている
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
芝居の書き割りでも見るみたいに、花やかな旅館街
水上 勉 / 越前竹人形 (1980年) amazon
電車や群衆の影が夢のように動く
徳田 秋声 / あらくれ amazon
棚のように崖が突き出す
日野 啓三 / 夢の島 amazon
崖が屏風のようにそそり立つ
西木 正明 / 『幸福』行最終列車 amazon
火山灰層の影が、名工の刻んだ天然の屏風
石森 延男 / コタンの口笛 第2部 amazon
薄茶の羊歯(しだ)が山の体毛のように下がる崖
伊集院 静 / 三年坂 amazon
花崗岩質の白い崖が灼けるように目にまぶしい
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
危険の立札を睨みながら断崖スレスレに歩いているような毎日
佐藤 愛子 / 窓は茜色 amazon
薄い茄子色の夕空を背景に、丘の疎林が影絵のようにくっきり浮く
原田 康子 / 挽歌 amazon
昔のままの通りを歩くと、生まれる前の過去に入って行くよう
丸谷 才一 / 年の残り amazon
草原が巾着(きんちゃく)の底のように、丘に囲まれて行き止まる
大岡 昇平 / 野火 amazon
大小約二百の楼が、川水に傘をひろげたように軒端を映してならんでいる
水上 勉 / 越前竹人形 (1980年) amazon
死火山の群れが、駱駝(らくだ)の瘤(こぶ)のような輪郭を描く
大岡 昇平 / 野火 amazon
長閑(のどか)な景色が、春風のように吹き込んでくる
芥川 龍之介 / 邪宗門 (1977年) amazon
山の姿が額縁に収められたようにストンと極(きま)る
高井 有一 / 夜の蟻 amazon
土が凍り、硬質ゴムのようにかたくなる
司馬 遼太郎 / 殉死 amazon
デコレーションケーキのように丸く華やかな花壇
小池 真理子 / やさしい夜の殺意 amazon
蟹の這いつくばったような醜い岩山
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
城壁のように蜿蜒(えんえん)と連なっている山々
新田 次郎 / 芙蓉の人 amazon
連山が障壁のように空を斜めに区切る
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
短い頭髪のように揃うて立っている林
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
停留所に並んでいる人々が紙人形のように平たく見える
黒井 千次 / 春の道標 amazon
笹地に白々と骨を立てたような枯れ木の原
高田 宏 / 木に会う amazon
岸壁が屏風のようにめぐる
中 勘助 / 銀の匙 amazon
野面にはそこここに、低い木立が島のように影をはらんで屯(たむろ)していた
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
暗い谷間の樹木のように、黒くおたがいに閉ざしあって群がっている小さな集落
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
教会が夥しい菜の花に囲まれ、黄色い波間に浮んでいるよう
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
石段に群がった人の波が、さながら竜のようにうねる
阿久 悠 / 瀬戸内少年野球団〈上〉 amazon
鮮やかな直線と曲線で区画された田畑が延々と続く風景は、一幅の名画さながら
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
山の姿が、淡墨で刷いたように霧につつまれる
徳田 秋声 / あらくれ amazon
激戦地の跡もかくやと思わせるほど、巨大な根株や丸太が散乱している洪水の跡
太宰 治 / 津軽 amazon
一陣の風に雑草がいっせいに葉裏を見せ、濃い緑一色の草の海が鈍く銀色に輝く
落合 恵子 / 夏草の女たち amazon
人の流れの中で棒杙(ぼうくい)のようになって、しばらくショーウインドーを眺めつづける
内海 隆一郎 / 人びとの情景 amazon
紙捻(こより)を植えたような桑畑
長塚 節 / 土 amazon
桑畑が、黄葉の少しばかりを残した針のよう
水上 勉 / 越前竹人形 amazon
外へ出られなくなっている二人は、氷の牢獄の中で光明を待つような気持ちでいた
新田 次郎 / 芙蓉の人 amazon
ショートケーキのようにボロボロ崩れやすい土
カレル チャペック / 園芸家12カ月 amazon
けし粒でも振りまいたように土が柔らかにこなれる
トルストイ / トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇 amazon
丘陵が重なり合い、その間に谷戸が毛細血管のように入り込む
森村 誠一 / 深海の迷路 amazon
白煙のごとく悠々と連なった山々
伊集院 静 / 三年坂 amazon
生まれたての獣のように、濡れた肌を光らせる
古井 由吉 / 聖―ひじり amazon
雲の影が斜面の上に落ちると、その部分だけ獣の肌のように、くすんだ滑らかさに変わる
中村 真一郎 / 夜半楽 amazon
夕日を受けると少し冷たい鉱石のように鈍く光る山
川端 康成 / 雪国 amazon
時間がしばし凍結したかのような山間の谷戸
森村 誠一 / 深海の迷路 amazon
防風林の梢が高く遠く、海に浮く島のように見える
高井 有一 / 北の河 amazon
誰かがハーメルンの笛でも吹いたみたいに、街を歩いてる子供の数が少なくなる
北村 薫 / 水に眠る amazon
南北に長く木の実を海上に浮かべたような島
塩野 七生 / ロードス島攻防記 amazon
町じゅうの人間が全部街頭にあふれ出てきたみたいな混雑の絶頂
ウィリアム・アイリッシュ / 黒いカーテン amazon
周囲に山をめぐらした盆地そのものが、冷たい藍色の大気を湛えた水槽のよう
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
大蛇のうねるような坂
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
はしごをのぼるような坂
深沢 七郎 / 妖木犬山椒 amazon
巨大な水鳥の上嘴(じょうし)のように、細長い尾根筋のふくらみ上がった砂丘
島尾 敏雄 / 島尾敏雄 amazon
草原が砂丘のようにゆるやかに起伏する
大岡 昇平 / 野火 amazon
街頭の騒音が、春の野の蜂のうなりのように遠くかすんで、耳をこころよくくすぐる
ウィリアム・アイリッシュ / 黒いカーテン amazon
街を行く人々の単調なざわめきが、海の底にいるかのように伝わってくる
柴田 翔 / されどわれらが日々 amazon
山脈が皺のよった毛布のように拡がる
遠藤 周作 / 何でもない話 amazon
翼のように波打つ峰をひろげる連山
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
鳥の背骨のようにある山脈
塩野 七生 / ロードス島攻防記 amazon
糸を引くがごとき連峰が夢よりも淡い
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
人々がざわざわと汐(しお)が引くように路地の奥へ消えていく
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
毛物(獣)の形をした山が、巨(おお)きな顎を海峡に浸して潮を飲む
内田 百けん / 冥途 amazon
静けさが冷たい滴(しずく)となって落ちそうな杉林
川端 康成 / 雪国 amazon
隙間なく生え揃った芝が滑らかな緑の毛氈(もうせん)を敷きつめたように静か
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
一面に濡れたように仄明るく見える芝草の一本一本が、青白く放電するように逆立つ
日野 啓三 / 抱擁 amazon
地響きが地の底で大太鼓でも打つ不気味さで、少しずつ少しずつ大きくなり、まっしぐらに接近してくる
杉本 苑子 / 今昔物語ふぁんたじあ amazon
難破船のような黒い島が波にもまれる
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
屋根屋根の上にぽっかり島のように浮かんだ山
安岡 章太郎 / 質屋の女房 amazon
蜂の巣を伏せたような、こんもりとした小さな島
大庭 みな子 / 三匹の蟹 amazon
緑したたる山の姿が、絵筆もおよびがたいほど、纏綿(てんめん)たる情緒にあふれている
白洲 正子 / 能の物語 amazon
赤みがかったぎらぎらした太陽が、白樺の雑木林を踊るように照らす
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
波濤のように起伏した皺の多い山の麓
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
雨が雑木林に砂のような音を立てる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
ゲンゲとタンポポと菫(すみれ)が、バラリと撒き散らされた珠玉のようにはげしく輝き合う
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
底のないすり鉢を降りているのではと疑われるくらい、長い長い下りの時間が過ぎる
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
まるで子供の歯がはえかわる時のように、街並みには一時的な奇妙な共存が見受けられた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
そこらじゅうの店先では大きな音楽がかかっていた。スティーヴィー・ワンダーやホール&オーツやら、パチンコ屋のマーチやら、右翼の宣伝車の軍歌やら、なにやかやが渾然一体となってカオスのような喧騒を作り出していた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
トマトは雨で濡れて暗闇の中で唯一赤い。クリスマスに樅(もみ)の木や窓辺に飾られる小さな電球のように、トマトは(車のハザードランプの明かりで)点滅してる。火花を散らしながら揺れる無数の赤い実は、まるで暗い深海に泳ぐ発光する牙を持つ魚のようだ。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
広いグラウンドの端にプールがありそのまわりには花が植えられている。腐乱死体に吹き出た発疹のように、増え続ける癌細胞の血漿のように、花は咲いている。白い布のように触れる壁を背景に、地面に散ったり急に風で舞い上がったりして。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
楽隊の騒々しい音が山の冷えた空気に統一されて、二人の耳もとを観世水のようにゆるく襲っては桜の中に流れて行った。
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
市中を馳(はし)る電車の響きは岸打つ波のごとくに消えつ起りつ
永井 荷風 / あめりか物語 amazon
家をゆすって遠いかみなりのような地ひびきをさせ、なにかが通っていきました。
松谷 みよ子 / はと「黒い蝶・うさぎのてぶくろ ほか (松谷みよ子全集)」に収録 amazon
街の物音が、厚い膜に包まれたように、遠くかすかに響いて来る。
石坂 洋次郎 / 暁の合唱 (1954年) amazon
融けたアンチモニィは、牛乳をいれすぎたココアのような色をしていた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
大きな転石が、青々と麦の延びた段々畠の中に、黒牛のようにうずくまっている。
大岡 昇平 / 来宮心中 amazon
月に嘯(うそぶ)く虎のような……乱石が点在し
三浦 朱門 / 冥府山水図 amazon
まるで胎内から生みだされて来たように、人肌じみたぬくもりを持つ液体がぬらりとして
森 敦 / かての花「月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)」に収録 amazon
美ヶ原の高原台地に登り切ろうとするところに、大きな岩が、城の砦のように頑張っている。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
雑多な岩が並ぶと見えて、ちらちらちらちらと玉の簾(すだれ)を百千に砕いたよう
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
倒れた身体の上に雲のような土がどっと落ちてきた
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
水飴のように光っていたその泥
伊藤 整 / 馬喰の果て (1954年) amazon
雨気をふくんだ叩きつけるような重たい風が崖の上から吹きおろしていた。
林 芙美子 / 骨「新潮日本文学 22 林芙美子集 放浪記・稲妻・浮雲・風琴と魚の町・清貧の書・泣虫小僧・牡蠣・晩菊・骨・下町」に収録 amazon
山々の向うから、次々と大軍団のように雲がせり出して来る。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
水平線から雲の峯が山羊を積みかさねたように、宙天に架け出され
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
静かな海に靄(もや)はふかくたちこめていて、岬の村は夢のなかに浮かんでいるようにみえた。
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
山のひだひだから煙のように白い靄がたちのぼり
森田 たま / もめん随筆 amazon
宝剱岳の右手には、飛白(かすり)のように雪をつけて三ノ沢岳が
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
空は深い海のように碧く、ひろびろと地平のかなたまで遠くはるかに、おなじみどりに澄んでいる。
森田 たま / 菜園随筆 amazon
海が広がって行って終わろうとするあたりから、空が広がって来、分かれがたいもののように、真珠にもまごうバラ色に輝いていた。
森 敦 / 初真桑「月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)」に収録 amazon
合成皮革のように清潔で退屈なアメリカの地表
倉橋 由美子 / ヴァージニア amazon
無口な温情をもって見守ってくれる 「お山」
石坂 洋次郎 / お山「わが日わが夢 (1959年) (新潮文庫)」に収録 amazon
急な勾配なのが、水気をふくんだ夜色のために、山の前面は暗い壁のように立って見えた。
川端 康成 / 山の音 amazon
空は赤白く曇って、山の端だけが、剥げたように透明になっていた。
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
これらの山は皆まだ白い雪の斑だ。あたかも雪のない山に対して俺は日本アルプスの一員だぞ、とその肌の色を誇っているかのように。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
南画からそっくり抜け出したような嶮しい山
竹西 寛子 / 長城の風 amazon
硯を立てたような山容である。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
神のように静かな山の姿
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
日本人たちが「神のように美しい」と誇っている山!
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
帽子が白く、スカートの青い、そして一条の巻雲を肩飾(エポレット)のように右肩になびかせた日本の女神
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
この東洋の多彩な列島の上に、自然の手によって釣りさげられた白玉と青玉の飾り天蓋のようにみえる。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
浅間山が眠れる獅子の静けさに居る。
正木不如丘 / 木賊の秋 amazon
何といっても浅間の美しさは限りなかった。美しいというよりは、いっそなまめかしい。怠惰な裸女の寝姿のようだった。
坂口安吾 / 佐久の夕映「日本の文学〈第63〉坂口安吾,織田作之助,檀一雄 (1969年) 白痴・道鏡・堕落論・他6篇 夫婦善哉・放浪・世相・他5篇 花筐・佐久の夕映・誕生・他3篇」に収録 amazon
鳥海山のあの秀麗な姿まで秀麗すぎて、なにかこう絵看板のようにまやかしじみてくるから奇妙である。
森 敦 / 初真桑「月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)」に収録 amazon
大山の美しい山並は、まるで拾い物をしたようにもみえた。
滝井 孝作 / 野趣 amazon
ドッシリ腰を下したといった感じでそびえている。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
槍・穂高の連嶺がさまざまに雪を光らせて立ちはだかっていたからだ。まるで僕が振り返るのを待っていたかのように。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
遠山は薄く昧(くら)く@略@影のように絵絹から消えて行きそうである。
三浦 朱門 / 冥府山水図 amazon
山岳は屏風を立て廻したように、その高い街道の位置から東の方に望まれる。
島崎 藤村 / 夜明け前 第1部(上) amazon
伊那谷と木曾谷を屏風のように仕切って、蜿々(えんえん)と連なっている木曾山脈
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
山肌が赤味を帯びて蜿々と連なったこの山脈は、確かに竜の天空にのた打つような趣に見える
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
遠くの中央アルプスらしい山脈が青空に幽かに爪でつけたような線を引いていた
堀 辰雄 / 美しい村 amazon
王冠とも細の襞ともみえる天山山脈
竹西 寛子 / 長城の風 amazon
落城の砦ともけだものの爪ともみえる雪の天山山脈
竹西 寛子 / 長城の風 amazon
関東山地の山々が雲をかぶって、髪を振り乱した女のように
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
遠い国境いの山々は、濃い薄い緑を盛り上げ、人肌のような温味を匂わせて、地平の果に、のびのびと横たわっている。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
薄墨で掃いたようななだらかな連山
小田 岳夫 / 城外「城外・紫禁城の人―他二篇 (1957年) (角川文庫)」に収録 amazon
山は頂上で、次の山に連なっていた。そしてそれから、また次の山が、ちょうど、数珠のように遠くへ続いていた。
黒島 伝治 / 渦巻ける烏の群 amazon
バケツを伏せたような峯が聳えている。
夏目 漱石 / 草枕 amazon
嶮岨(けんそ)な峰と峰とが襟を重ねたように重畳している。
近松 秋江 / 狂乱 amazon
両側から荒鉋(あらかんな)で削りとったような尾根伝いだ。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
臥した牛の背のように悠揚として空に曳くながい稜線
森 敦 / 月山 amazon
真っ白い鶏冠(とさか)のような山巓(さんてん)
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
赤い火の色が麓の方へ降りて行って、山の姿の半分位までが、明るく光り出した時分には、要の頂上は、瑪瑙(めのう)を磨き立てた様な色になっていた。
内田 百けん / 東京日記「東京日記 他六篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
丘をひとつ越すと、夢のようなうつくしい山間がある。
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
遠景の、羞恥心のない女の背のようなくぼみのある丘
野間 宏 / 暗い絵 amazon
その丘はどこか女の脇腹の感じに似ていた。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
山と山との間に瘤のような小高い岡があって
井伏 鱒二 / 珍品堂主人 amazon
坂の上から見ると、坂は曲がっている。刀の切先のようである。
夏目 漱石 / 三四郎 amazon
その静かな坂は裾の方で振袖の丸みのように鷹揚なカーブをみせ
円地 文子 / 妖 amazon
二里ばかり大蛇(おろち)のうねるような坂
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
大きな波濤のような傾斜
島崎 藤村 / 千曲川のスケッチ amazon
海のような浅間一帯の大傾斜
島崎 藤村 / 千曲川のスケッチ amazon
ひろびろと果しない平野のそちこちにしたたるような緑のかたまりが、ぽたりぽたりと青絵具でぬりつぶしたカンバスの上に、更に青さを落したように、惜し気もなく豊かな色をかさねているのであった。
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
淼々(びょうびょう)たる海原のよう
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)」に収録 amazon
巨大な凍原(ツンドラ)の果てしない拡がりは、地球の表面のすべてが象皮病のように厚ぼったい感触に死に枯れ果てたように思われる。
平林 たい子 / 大草原「日本の文学〈第48〉平林たい子,大原富枝 (1969年)地底の歌・秘密・桜・他 婉という女・大草原・他」に収録 amazon
月さえも出た北信濃の高原は、純白な紙の中を歩くようで
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
連山がその裾に緑の褥(しとね)のような気持のよさそうな草原を敷いていて
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
断崖は、うちたてた屏風のように海に乗り出して
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
窖(あなぐら)のような崖下の暗さ
林 芙美子 / 骨「新潮日本文学 22 林芙美子集 放浪記・稲妻・浮雲・風琴と魚の町・清貧の書・泣虫小僧・牡蠣・晩菊・骨・下町」に収録 amazon
ちょうど円形劇場に似た風で、すりばちのように八方から斜面が切れ込んでいる。
梅崎 春生 / 桜島 amazon
斧で断ち割ったような谷
三浦 朱門 / 冥府山水図 amazon
林は、裸の丘を額にしてそれの頂だけに、美しい生え際をして生えて見える。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
ところどころに、雑木林が島のように浮かび
松谷 みよ子 / 黒い蝶「黒い蝶・花びら (1978年) (講談社文庫)」に収録 amazon
吹雪の夜のこういう松林の負傷の青は、車の前燈に染め出されると、稲妻のなかの女の裸体のように、実になまなましかった。
川端 康成 / 二十歳「川端康成全集 第5巻 小説 5」に収録 amazon
合歓(ねむ)林があり、それが、砂丘の起伏につれて波のようにうねりながら
中野 重治 / 歌のわかれ amazon
尾を拡げた孔雀のような椰子林
横光 利一 / 王宮「定本横光利一全集 (第10巻)」に収録 amazon
大徳寺の広大な寺域を包む樹林が鬱蒼たる島のように迫ってくる。
光瀬 龍 / 宮本武蔵 amazon
谷中の森はいつも隠者のような静かな体を備えて
田村俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
雲のごとき上野谷中の森
永井 荷風 / 日和下駄 amazon
山裾一面の森は@略@深潭のように広漠とした夢魔を湛えていた。
牧野 信一 / ゼーロン amazon
森林全体が吠えるような悲鳴をあげ、降りそそぐ水しぶきにけむってしまった。
北杜夫 / 牧神の午後 amazon
森や林が薄墨を刷いたような柔かい簡素な色彩を見せている。
石坂 洋次郎 / 暁の合唱 amazon
黒ぐろと樹木をコンモリ茂らせたその島は、まるで童話の絵本でも見るような、ある典型的な眺め
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
山高帽のような形をした島
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
東洋の海に浮かんだ宝の小箱のようなその島
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
寝そべったような淋しげな島
林 芙美子 / 浮雲 amazon
二階の窓からは、幕を張ったように、大きい桜島が見え、桜島は雨で紫色に煙っていた。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
中の海の大根島にも陽が当り、それが赤鱏(あかえい)を伏せたように平たく
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
岬がなだらかに女の腕のような線を描いてのびている。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
緑色の棒を寝かせたような半島
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
三浦三崎なるあの煙のような半島
牧野 信一 / 淡雪 amazon
入り江の海を湖のような形にみせる役をしている細長い岬
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
青い陶器の胸のようにふくれた水平線
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
新鮮な緑と絵のような風物とゆたかな光線。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
まるでチョコレートの化粧箱の色刷りの絵のような風景
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
明るいが、どこか総体に冷たく沈んだ瀬戸物の絵のような、伊豆の美しい雑木林の風景
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
笛の音や、うちわや、潮風の風景がゆっくりと夜に映って、まるで燈籠のように流れてゆく
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
ギヤマン模様のように澄明な猪鼻村のパノラマ
牧野 信一 / ゼーロン amazon
丈の高い椿が、この清楚な竹藪のなかの異端者のように、重苦しく立っていた。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
あらゆる色彩の@略@日傘になる
川端 康成 / 春景色「伊豆の踊子・温泉宿 他四篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
櫛を並べたように稜線を透かした立ち木
森 敦 / 月山 amazon
ポーッと次第に上の方へと赤みがかった山の肌。まるで破瓜期(はかき)の少女の陰毛のようにポヤポヤと見えるのは、やっぱり立木の群だろう。
檀 一雄 / 佐久の夕映え「檀一雄全集〈第1巻〉花筐,佐久の夕映え (1977年)」に収録 amazon
微風が到るところで、彼女(高原)の柔らかい産毛のような若草と戯れ
立野 信之 / 軍隊病「軍隊病―兵士と農民に関する短篇集 (昭和4年) (日本プロレタリア作家叢書〈第5篇〉)」に収録 amazon
草汁を撒きかけたように、斑な緑が町並のところどころを染めて涼しかった。
岡本 かの子 / 落城後の女「岡本かの子全集〈4〉 (ちくま文庫)」に収録 amazon
花園の花々は群生した娥のようにほの白い円陣を造っていた。
横光 利一 / 花園の思想 amazon
燃えたつようにシバザクラが一面に咲いていた。
山口 瞳 / シバザクラ「山口瞳大全〈第5巻〉」に収録 amazon
むらさき色のカーペットは、マツムシソウの花がさいているのであった。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
田圃に紫雲英(れんげそう)の花が毛氈(もうせん)のように咲き敷き
大原 富枝 / 婉という女 amazon
小麦の穂にもびっしりと黴(かび)のような花が附いた。
長塚 節 / 土 amazon
草原の草の穂がさざなみのようにゆれて
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
彼は都会の土では萎れ、郷土でやっと息を吹き返す、かの植物にも似た自分の宿命を観念した
中山 義秀 / 厚物咲 (1955年) amazon
人間のながれが、縦横無尽に入り乱れ、@略@泥鰌(どじょう)の生簀(いけす)のようだった。
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
人の流れは港内の泡のようにゆっくりと動いていた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
スキー場みたいな驚くほど急勾配の斜面
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
空気ははっとするほど新鮮で、あたりには静寂が満ちていた。それにあわせて聴覚を調整しなおさなくてはならないほど深い静寂だった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
人々が二人のまわりを川の流れのように足早に通り過ぎていった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
都会特有の微かな羽音のような、途切れることのない騒音
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
アパートを出入りする人間は一人もいなかった。公演が不入りのうちに終わり、誰からも見捨てられ忘れられた舞台のように、玄関は無人のまま静まりかえっていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
すぐ真下は、スクランブル交差点だ。信号待ちをする人々は、群がる蟻のように見えた。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
風のせいなのか、左右に揺れていた。そのたびに葉が音を立てる。巨大な動物が足踏みをして、体毛を震わせるかのようだった。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
巨大な眼窩そのものとも言える、深々とした杉林
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
建物や地面がびゅんびゅんと後方に投げ捨てられていく。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
吹き飛ばされるかのように、後ろへ通り過ぎていく建物を目で追いながら
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
小丘を越えると下は狭い、まるで犬の舌のように細長くはいりこんだ田
和田伝 / 和田伝全集 第2巻 amazon
若いハイカラ男やハイカラ女が雑踏にまじってあちらこちらへ歩るいている。流行のみなりをしていそいそと、まるで尾ひれを振ってあるく金魚かなどのようにしなしなと品をつくッて歩るいている。
相馬 泰三 / 六月 amazon
魚の群のように散歩着の人々が流れて
松谷 みよ子 / 夜「松谷みよ子の本 (第4巻) 童話・詩」に収録 amazon
狭い庭の先に紙捻(こよ)りを植えたような桑畑
長塚 節 / 土 amazon
町全体がどこか眠ってでもいるかのような、瀬戸内海に面したある小都市
島木 健作 / 癩 amazon
まるで花壇のような玩具(おもちゃ)じみた畑
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
麦畑では少しばかり伸びた麦が微風の方向へ漣(さざなみ)のように揺れていた。
藤沢桓夫 / 君に告げん
歳月と炊事の煙のために古いフランドル派の絵のようなくすんでおちついた色合いを示している街並み
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
大木の日蔭にある草が枯れて行くように小河内は発展する東京の犠牲になって枯れて行くのである。
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
ビルの五階にあった窓から見下すと、電車や自動車や通行人などを蟻のように数えることもできた。
福永 武彦 / 草の花 amazon
低く、広く、だんだんに盛りあがってゆく皆の揃った唄声のように、幾百幾千の長屋がどんなに圧(おさ)えられてももっと低く、もっと低くおしだまって、闇底にうずくまっていた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
自分の生れた土地の姿を人の筆で読む事は自分のうしろ姿を思いがけなく見せてもらったようになつかしい。
森田 たま / もめん随筆 amazon
丘の家々は、石のように雪の下に埋れていた。
黒島 伝治 / 渦巻ける烏の群 amazon
眼に蓋をするように、冷たい石垣が@略@視野一杯に滑りこんで来る。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
隣接した小学校から潮騒のようにひびいて来る声
大岡 昇平 / 花影 amazon
麦畑は青い海のように、またも果てしなく続く。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
ぞろぞろと蟻の行列のよう
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
はるか向うの目の下に、虫のようにコースを歩いている人間がみえた。
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
タクシーは天道虫のように、ゆるい坂から山の手へのぼる。
永井 龍男 / 絵本「朝霧・青電車その他 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
ただ一枚の青畳を敷いたような田圃(たんぼ)
長塚 節 / 土 amazon
まっ黒にしげった森のなかをひとすじの路が縫うようにうねって
中 勘助 / 銀の匙 amazon
山全体が夢見るような多彩な美しさでした。
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
両側の萩の江向(えむかい)の町の古ぼけた軒並みを、重い囚衣のように感じながら。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
毒茸のようにけばけばしい家並み
阿刀田 高 / Y字路の街「だれかに似た人 (新潮文庫)」に収録 amazon
はずんだ石ころのように坂道をかけおりた
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
雨に曝(さら)されたボール箱のように、ボソボソした長屋の群
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
市街の割れた柘榴のような全相がきらきらと陽に輝き渡っている眺望
横光 利一 / 青い石を拾ってから「横光利一全集〈第2巻〉 (1955年)」に収録 amazon
麓の蜜柑畑が更紗の模様のようである。
鈴木 三重吉 / 千鳥 amazon
岬のような形に偃(は)うている水田
長塚 節 / 土 amazon
曇った空の下にビロードのように滑らかに美しく眺められた。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
戦争中の日本は嘘のような理想郷で、ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。
坂口 安吾 / 堕落論 amazon
停留所はまるで祭帰りの道のように、キャラメルの箱や、鼻をかんだ塵紙があっちこっちに散乱して
林 芙美子 / 山中歌合「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
キノコの群のような家並
日野 啓三 / 夢の島 amazon
人波は、水溜りのお玉じゃくしの群のように、後から後から押して来ては揺れうごいた。
徳永 直 / 太陽のない街―他二篇 (1953年) amazon
見下した往来には、無数の人があちこちと、虫のように蠢(うごめ)いていた。
池谷 信三郎 / 橋 amazon
麦畠がある。風が来ると、緑の波のように動揺する。
島崎 藤村 / 千曲川のスケッチ amazon
京都は、東西に走る通りと南北に走る通りが垂直に交差する、碁盤の目のような都市です。私は、そんな理路整然とした街並みの中で@略@周期表が目に入った瞬間、忘れていた故郷の京都の街並みがフラッシュバックしてきたのです。その理由は、周期表で示された秩序が、京都の世界観と見事に共通しているように感じられたからです。
吉田 たかよし / 元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち amazon
たくさんの杉が、地面から矢のように伸びる姿は、美しかった。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
僕はしばらくそこに立って、景色に見惚れていた。風の音と、鳥の声しかない。息を吸い込めば、その音すら身体に取り込めそうだった。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
朝もやの中に、頂点の高いピラミッドを思わすシルエットが不気味に佇んでいる。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
覆い被さってくるかのようなオーバーハング帯。この逆層の壁は、まるで天空に住む巨人の屋敷から迫り出した庇だ。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
遥か先には雑木林のくすんだ緑が、紙屑でも丸めたような形に小さく見える。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
丘は幾つもの起伏となって一列に連なり、眠りについた巨大な猫のように、時の日だまりの中にうずくまっていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
都心から急激に伸びた住宅化の波は僅かながらもこの地に及んだ。東京オリンピックの前後だ。山から見下ろすとまるで豊かな海のようにも見えた一面の桑畑はブルドーザーに黒く押し潰され、駅を中心とした平板な街並が少しずつ形作られていった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
霊園は墓地というよりは、まるで見捨てられた町のように見える。敷地の半分以上は空地だった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
空地は平らで、くるぶしまでの柔かい草が浅瀬のように広がっていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
駅前の交差点では大勢の人が行き交っていて、一秒たりとも風景がじっとしていることがない。まるで街が生きているように見える。人間の身体で例えれば、渋谷駅は心臓だ。文化村通りやセンター街など、あちこちに延びた道路は血管で、道行く人たちは血液にあたる。心臓は今日も大量の血液を街の隅々にまで送り出す。
428 ~封鎖された渋谷で~ amazon
禿山の頂のように、草がなく、むき出しの赤土がてらてらと光る場所
藤沢周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
山が破裂するのではないかと思われるほど激しい山鳴り
井上靖 / 小磐梯 amazon
レンゲの咲く田んぼが、遠くまで紅に煙るよう
辻井喬 / 暗夜遍歴 amazon
若葉の山腹が西日を受けて、野の只中に金屏風を立てたように見える
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
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